タフィ・ローズを捜しています

最愛の野球選手であるタフィを超える選手を捜しながら、80年代、90年代のプロ野球の記憶などを記録していきます。

球場跡地訪問記録 「勇者たちへの伝言」を読んで西宮へ

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兵庫県は西宮市、阪急電鉄神戸線 西宮北口駅

 

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オリックス・バファローズの前身チームの一つ、阪急ブレーブスの本拠地としてかつて存在した阪急西宮スタジアム跡地を訪ねた。

 

・・・・

 

訪問のきっかけはラジオ番組と、1冊の小説だった。 

ABCラジオの「よなよな」という、森脇健司さんが司会のラジオ番組で野球好きの芸人さんらがパ・リーグについて語る回があり、番組中に西宮スタジアムの思い出話がはじまった。 

その中で増山実 著「勇者たちへの伝言 いつの日か来た道」という、ブレーブス西宮スタジアムが舞台となっている小説が紹介されており、さっそく取り寄せて読んでみることにした。

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主人公が西宮スタジアム跡地にたつショッピングモール(阪急西宮ガーデンズとして実在する)にふらりと訪れるところから物語が始まる。

物語全体が試合やチームにフォーカスしたいわゆる「野球小説」ではないものの、実在した選手や応援団長などが登場するところが興味深く、なにより球場とその周辺の風景、試合、選手に対する想いについて共感できる部分が大変多く、ところどころうっすら涙を浮かべながら読み進めた。

 

私は大阪出身で、西宮市はそう遠くない場所であったが、物心ついた時にはブレーブスはすでにオリックス・ブルーウェーブ球団となっており、本拠地も神戸グリーンスタジアム(2017年現在ほっともっとフィールド神戸)として定着していたため、「阪急ブレーブス」「西宮スタジアム」に関するリアルタイムの記憶はほぼ無い。

それでも、南海ホークス近鉄バファローズの球団や球場の変遷を身近に経験しており、自分や家族が応援していたチームと球場が街からなくなることによる、穴のあいた感じというのは理解できる。 

加えて、前述のとおり、ブレーブスが現在私が応援するチームのひとつ、オリックス・バファローズの前身でもあるため、球団とその本拠地球場に俄然興味が湧いてきた。

たまたま大阪・梅田で仕事があり、空いた時間で阪急神戸線に乗り、件の西宮北口駅を訪れることにしたのだ。

 

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自分の記憶になく、球場も現存しない初めての場所で、何を感じるのか。

自分自身の心境にも興味を持ちながら、阪急電車で現地へと向かった。

 

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参考までに、目的地である西宮スタジアム跡地と、現存する大阪、兵庫の主要球場の位置関係をまとめておく。リーグは違えど、西宮スタジアムと甲子園が近かったことがわかる。

 

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阪急神戸線梅田駅から20分程度で、西宮北口駅に到着。

アクセスに関しては、オリックスに身売りした後の本拠地球場(現ほっともっとフィールド)よりもはるかに行きやすいと感じた。いわゆる大阪・キタのエリアからもすぐに行ける球場のひとつという位置づけだったのだろうか。

 

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案内板にしたがい、西宮ガーデンズに向かう。

 

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駅から徒歩3分程度で西宮ガーデンズに到着。

巨大モールだとは聞いていたが、想像よりも建物が大きくスマホ撮影画像では納まりきらない感じだ。

 

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私がまっさきに向かったところは、小説中で主人公も訪れた、最上階シネコンの隣にある阪急西宮ギャラリーだった。このギャラリースペースの3分の1程度だろうか、阪急ブレーブスのコーナーが設けられているのだ。

 

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まず目に入ってきたのはユニフォームやトロフィー、フラッグのショーケース。

 

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野球殿堂レリーフのレプリカコーナーに、

 

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映像資料が閲覧できるモニター。

野球以外のコンテンツも充実しており、「宝塚歌劇 大運動会」など特にみごたえがあったが、

 

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2017年7月に逝去した上田利治氏が登場する映像を何度も繰り返し、見入ってしまった。

私がリアルタイムで記憶しているのは90年代の日本ハムファイターズ監督としての姿だが、こういう資料によって、自分が知らなかった選手、監督の一面や偉業を知ることができてうれしいし、たのしい。「好きが増す」という表現がしっくりくるだろう。

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そして私が一番見たかった、西宮スタジアム模型と周辺のジオラマだ。

2m四方ぐらいだろうか、大きなショーケースが展示コーナーの中央に鎮座している。

 

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バックスクリーン方向から。フラッグは西武戦仕様だ。

 

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観客まで精巧に造られている。実際の球場に来たことがない者としては、この中に入りたくなってしまう。

 

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模型ショーケースのわきにはモニターが設置されており、ボタンを押すとブレーブスのマスコット、ブレービーの映像が流れる。試合中にバックスクリーンで流されていたアニメーションだ。色合いといい、動きといい、また好きが増してしまう。

 

小説中、主人公がこのギャラリーで元阪急応援団団長に出くわし、そこで

「しゃがんでみたら、答えがわかる」

と言われるシーンがある。

 

この時点で他の来客は50代とおぼしきサラリーマン風の男性のみ。順番待ちなども気にする必要もなく、私もしゃがんでみることにした。

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この球場と当時の街を実際に知ることはできないが、それでも当時のファンが、この道すがら、さぞワクワクしたんだろうなと想像できる。

勇者のレリーフが見えはじめたあたりで、プレーボールに間に合うかな、と早足になったり、今日は勝ってほしいなあ、とか、いろんな気持ちで西宮北口駅周辺を歩いたのではないだろうか。

一試合ぐらいこの球場で野球が観たかったような気もするが、思い出があると、球場取り壊しの事実が耐えられなかっただろうし、こうしてぷらぷらと跡地訪問することもなかったかもしれない。

 

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ギャラリーを出た後、モールの野外庭園部分に足を運んだ。

ここにも野球場の跡が残っている。

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スタンドを模した段状のベンチにわきにひっそりと、

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ホームプレートが実際にあった位置に、ベースレリーフがある。

日が暮れたあと、人もほぼいない時間帯に訪問したこともあってか、正直「墓石みたいだな」というネガティブな感想を禁じえなかった。野球好きとしてはもうすこし敬意あるレイアウトにしてほしいと感じた。

 

でもまぁ、これが西宮ガーデンズにとってはベストな「遺し方」だったのだろう。

 

・・・

 

「…どんなギャラリーなら満足できる?」

 

小説中、応援団長が主人公に問いかけるシーンがある。

 

私なら、野球が好きな気持ちが増すようなギャラリーであればそれでいい、と答えるだろう。

昭和パ・リーグの足跡をたどって、ただノスタルジーに浸りたい気持ちもあるけれど、それでも球場と球団がなくなったことを嘆き、ショッピングモールの存在を否定するためにここに来たわけではないのだ。

 

私ができること・やりたいことは、なんてことない野球の思い出を記録することと、現存する、愛する球団を応援して思い出を積み重ねていくことなのだと、初めて訪れた西宮スタジアム跡地で再認した。 

 

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(無性にやりたくなった、オリックスバファローズグッズとスタジアム模型で記念撮影)

 

そういえば、2018年も続投が決定しているオリックス監督、福良淳一氏は阪急ブレーブス出身で、名将・上田監督に育てられた選手の一人だ。

ファンからはなにかと厳しい言葉を投げかけられることが多い福良氏。辛いときはこのギャラリーに来て、しゃがんでみてはどうだろう。

 

たのむで福良。

 

記録はつづく

 

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西宮北口駅 阪急西宮ガーデンズ  2017年11月17日(金)訪問

 

増山 実 著

勇者たちへの伝言 いつの日か来た道

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