タフィ・ローズを捜しています

最愛の野球選手であるタフィを超える選手を捜しながら、80年代、90年代のプロ野球の記憶などを記録していきます。

野球ファンも濡れる街角 藤井寺・しゃむすん訪問の記録

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ずっと会ってみたかった人。

 

大阪府藤井寺市にある、「しゃむすん」に行ってきた。

 

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しゃむすんとは 

しゃむすん は、元近鉄バファローズの栗橋茂氏が営むスナックのことである。

栗橋氏は、私が藤井寺球場近鉄を応援しはじめた1990年代に入る前にすでに引退されており、現役時代のプレーを拝見することはかなわなった伝説の猛牛戦士だ。 

世代は違うものの、昨今、各メディアで同氏のお名前と数々の豪快なエピソードを目にする機会が増えた。

主に、同じく元近鉄金村義明氏によって豪快伝説が語られ、パ・リーグファンを中心に栗橋氏およびしゃむすんが再注目されている。お店訪問レポートブログもネットで多く確認でき、私もずっと行ってみたいと思っていたが、現役時代を知らないし、ひとりで行くのも不安だし…といちいち理由をつけては訪問できずにいた。

おもしろく語られるエピソードにばかり焦点を当てられがちだが、なんといっても近鉄史を語る上で欠かせない4番打者だ。恐れ多い…。

加えて、私自身が苦い思いを抱える場所にお店がある点も引っかかっていた。

shibata-pro.hatenablog.com

2019年前半戦、バファローズの成績は一向に振るわない。勝ちを重ねて笑顔で藤井寺に…という思いもどこか遠い話に思えてきた。

でも、このまましゃむすん未経験でいるのもいやだ…。

 

たまたま、野球がらみで大阪に行く予定自体は以前から立てていた。

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毎年現地観戦している近鉄復刻試合、KANSAI CLASSIC 2019だ。

わくわくしながら臨んだ近鉄戦だが、今年は苦しいゲーム展開が続き、猛牛打線復刻とは遠く苛々がつのる。

もう自分で、本物の猛牛戦士に会いに行けばいいんじゃないか。

 

藤井寺へ 

5月18日土曜日。近鉄の辛勝を京セラドームで見届けたあと、大正から天王寺に移動し近鉄南大阪線に乗り込む。

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藤井寺行きの車体を見て、変な汗が止まらなくなる。

入店一番「お前みたいな女がひとりで飲みに来るんじゃねえ!!」などとドヤされたらどうしよう。

弱気になりながら藤井寺駅に到着し、商店街を歩いていく。 

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お店が見えてきたところで、さっきまで球場で着けていた近鉄帽をかぶり直して気合を入れる。

行くぞ…!!

 

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扉を開けると、先客が2組。近鉄ユニフォームを着た、私とおなじく京セラドーム帰りの男性2名と、地元のご常連1名。

緊張と興奮でギンギンの目をした私に、店主がカウンターへの着席を促してくれた。 

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「初めてだよね? 」

「球場行ってたの?」

 

低くてやさしい声。

それが栗橋茂氏、しゃむすんの茂マスターとのファースト・コンタクトであった。

 

(ドヤされなくてよかった…)と一気に安堵に包まれる。

ここにずっと来たいと思っていたこと、

世代は違うが憧れていたこと、

球場跡地を見てショックを受けたこと。

駆け足で話を聞いてもらいながら、ウィスキーの水割りとお通しをいただいた。

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どれも美味しい…!

 

茂マスターとの会話を楽しむ

お酒の力も借りながら、引き続き、茂マスターに相手をしていただく。 

茂:ひとりで来たの?

私:はい、友達いなくて…

茂:俺とおんなじだな。

私:笑。現役時代のことは存じ上げないのですが、当時のお写真すごくかっこいいですよね、もちろん今もかっこいいです…!

茂:金村が当時のことをテレビやなんかで話すから、それで知る若い人もいるよね。

私:「女は目で濡らす」って本当に言われたんですか?

茂: (優しい目つきで頷きながら)あれは金村にじゃなくて、中畑に言ったんだよ。

私が一番好きなエピソードに早々に触れられてテンションが上がる。それにとても柔らかい口調と優しい表情で応えてくれるので、「目で濡らす…"ある"なあ…」と妙に納得してしまった。

・・・

私:女性からのファンレターは全部読んでました?

茂:うーん、それはここじゃ言えないな…まあ俺、字読めないから。 

私:笑。仰木監督のお話も聞きたいです。

茂:仰木さんねぇ、俺のケンカの仲裁中に浴衣がはだけて"見え"ちゃってさァ(腕と股を開いて股間に人差し指を垂らすポーズをとりながら)大変だったよ。 

各メディアで語り継がれてきた「仰木監督仲裁エピソード」についても全身で再現して下さった。マジシャン・仰木彬氏を人差し指一本で表現できるのは、世界中でも茂マスターだけだろう。

・・・

マスターとの会話たけなわ、他のお客さんが店内のカラオケでもんた&ブラザーズの「ダンシング・オールナイト」を歌い始めた。 

私:この歌、かすれ声がいいですね。

茂:(歌ったお客さんを指して)この人は人生がかすれてるからナ。 

会話中のマスターの俊敏華麗な"かえし"に感動してしまう。

そう、しゃむすんではカラオケも楽しめる。私も僭越ながら松田聖子の「Sweet Memories」を歌わせていただくと、お世辞まじりにマスターが褒めてくれた。 

茂:ひょっとして、松田聖子本人じゃないの?

私:松田聖子近鉄帽かぶって藤井寺に来ないと思います…! 

かつて野球界で名を馳せた方とこんなやりとりができるとは。うれしすぎて、楽しすぎて夢のようだ。 

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先客の近鉄ファンの男性と一緒に「近鉄バファローズの歌」も歌わせていただいたのも良い思い出だ。

その他にも「〇〇(某現役監督)殴ってやる!」など数々の発言が飛び出して、めちゃくちゃ楽しい。ご常連の方にとってはこれが「通常運転のしゃむすん」なのか。うらやましすぎる。

 

藤井寺球場ここにあり

しゃむすんには、マスターご自身が着用していた帽子や、藤井寺球場の設備備品がお店の隅に保管されているのでも有名だ。

私も許可を得て、見せていただいた。

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球場のスコアボードで使用されていた選手名のボード。

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ローズのボードもある!! 球場から運び出し、所有してくださっている茂マスターに感謝である。

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球場跡地でがっかりしてないで、しゃむすんに来ればよかったのか…!

 

再訪を誓い、濡れる

マスターとのおしゃべり、カラオケ、球場看板などを楽しんでいると、あっという間に3時間弱が過ぎていた。茂マスターは「もう緊張ほぐれたでしょ?」と相変わらずやさしい言葉をかけてくれる。

帰りたくない…

とはいえ、お店にはご常連が入れ替わり来られる。一見客が居座るのも気が引けるので、名残惜しい気持ちをぐっとこらえてお会計をお願いした。

お酒4~5杯、お通し、カラオケ込で3000円。こんなに楽しい経験をしておいてこの価格。実質タダみたいなものである。

そして、どのお客さんに対しても、茂マスターは店外までお見送りをしてくれる。

私の退店時にも大きな手で握手してくださり、「気をつけてね」と優しく見送ってくださった。

絶対、また来ます…!

力強く再訪を約束した私の瞳は濡れていた。 


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以上が、2019年5月 しゃむすん初訪問の記録だ。

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以前は球場跡地で落胆して、もしかしたら二度とここには来ないかも、とさえ思った藤井寺駅

自分が知らない時代も、藤井寺大阪ドーム時代も、たとえ弱かろうが、現在のチームも含めて、バファローズが好きだ。

そう思えるぐらい、この日は最高に幸せな気持ちで帰路につくこととなった。 

 

敷居なんて削ってしまえ

さて、しゃむすんに行ってみたいけど、近鉄ファンじゃなかったし…世代じゃないし…野球の話できないし…など、敷居が高いと感じる必要はない。茂マスターは野球以外のいろんな話題を振ってくれるし、一見客ひとりでも楽しく過ごさせてくれる。

行ける方は躊躇せず、どんどん飲みに行ってみてほしい。

 

おわりにかえて、茂マスターとのやり取りをもう一つ記録しておこう。

 

私:自分もそうでしたが、ここに来たくても、敷居が高いと感じてる人は多いと思います…

茂:敷居なんて削ってしまえばいいんだよ!

(カンナで削る仕草とともに) 

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記録はつづく

 

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しゃむすん

[月~土] 20時~24時頃 [日・祝]休み 

20時ちょうどに行っても開いていないという情報多数。20時過ぎの訪問がベスト。

盆暮れ正月はイレギュラー営業、またコロナ禍の影響で営業日と時間が状況により変わる可能性があるため、前日までの電話での確認をおすすめします。

 

〒583-0024 大阪府藤井寺市藤井寺1丁目2−6

072-954-1777